Gaveau(ガボー)修理作業の例


【修理前の状態】
最初に弾いて、音色の不揃い、タッチの不揃い(非常に重い)、連打がしづらい、音が止まらないなどの症状が出ていました。
以下、施した作業の詳細について解説します。

 1.アクション解体

メカニック部分の総点検をするには、総ての部品をバラバラに解体する必要があります。
解体したことによって、総ての間接部分の動きがとても悪いということが判明しました。
このほか、金属部分の老朽化が進んでいること、フェルト部分の虫食いなども判明しました。
これらの症状から、
ピアノが湿度の高い場所に置いてあったということと、長い時間弾かずにいたということが考えられます。




 2.鍵盤の下の掃除・パンチングクロス交換

鍵盤の下はピアノを弾いていなくても、不思議とほこりがたまってしまいます。
この埃が湿気を含んでしまう恐れもあるので、定期的な調律で掃除機をかけてあげる必要があります。
また、鍵盤の下に入っているクッションの役割をしているフェルト類も虫食いの被害を受けやすく、
このピアノも虫に食われてしまって役割を果たさなくなってしまっているので交換する必要があります。
また、鍵盤の摩擦部分であるピンやボタンも汚れていると、それだけで鍵盤が重くなってしまうので、
この部分もきれいに磨きます。


 3.バットスプリング交換

グランドピアノの場合、ハンマーは下から上に動いて弦を叩くので、重力の力も手伝ってハンマーは元の位置に戻ります。
対してアップライトピアノの場合、弦が縦に張ってあるので、ハンマーは前から奥に向かう前後運動をします。
従って、ハンマーを元の位置に戻すためにアップライトピアノにはたくさんのスプリング(ばね)が使われています。
写真はそのばねのうちのひとつのバットスプリングと呼ばれる部品です。
このばねが引っ掛かるための先端がほぼ総てこのように折れてしまっているのがわかります。
これでは連打をするのが物理的にとても難しくなります。


 4.フレンジコード交換

この部品は、上記3で説明したバットスプリングを引っ掛けるための紐です。
この紐と上記のばねの2つが合わさって初めてピアノは連打をすることが可能になります。
この紐も古くなったり、湿度が高い場所で放置されていると切れてしまいます。


 5.センターピン交換

センターピンとは、ピアノのメカニックの間接部分にあり動きの軸の役割をしています。
湿度の高い場所にあったり長らく放置されてしまうと、
ピンの回りに巻いてあるフェルトや木そのものが膨張してしまい動きが悪くなります。
人間でも長期間関節を固められて動かない状態でいると、久しぶりに動かそうと思ってもなかなか動かないのと同じです。
この部分の動きが悪いと、
連打がしづらくなったり、さらにひどくなると鍵盤が下がったまま戻ってこなくなったりします。
直すには一度古いピンを抜き、膨張してしまっているフェルト部分を専用のヤスリで削りながら、
丁度良い動きのセンターピンを選びます。
1つの音につきこの間接部分が4つあり鍵盤が88音(ダンパーだけは66本)ありますので、
330回気を抜かずにこの作業を続けなければなりません。
軸の動きがスムーズになることにより、鍵盤を押した力がハンマーまでしっかりと伝わり、
自分の思った音量や音色を表現することができます。


 6.ダンパー修理

音を止めるためにある部品をダンパーと呼びます。
この部分が老朽化していたり、虫に食われてしまっていると、音が止まり方が不揃いになってしまいます。
また、常に同じ場所に当たり続ける部分はこのように大きく凹んでしまいます。
ダンパーフェルトを交換することによって、音の止まり方もそろい気持ちよく弾くことが出来ます。


 7.マフラーフェルト交換

真ん中のペダルを踏んだときに弦とハンマーの間に入るフェルトです。
古いと音の弱くなり方が不揃いになります。


 8.アクション組み立て

バラバラにして消耗品を交換した部品を元のように組みます。
この作業も実は非常に高い精度が求められる作業です。
つけたり外したり、ピアノに納めたりと、何度も繰り返しながら組み立てていきます。


 9.ハンマー調整

アクション部分は木で出来ていますので、ハンマーも徐々にずれてきます。
ハンマーが3本の弦を叩く時、ハンマーの真ん中で弦を叩くのが正しい位置なのですが、
この調整をずっとしていないと徐々にずれてきて、ハンマーの真ん中ではない位置で弦を叩くようになってしまいます。
野球で言いますと、ボールの当たる位置がバットの先端やかなり手前になってしまうのと同じで、
そのピアノ本来の音が出なくなってしまいます。
ある音は真ん中で叩いていて、ある音はずれている状態になっていると、
同じ強さで鍵盤を押しているにも関わらず、聴こえてくる音量が違うということが起きます。
総てのハンマーが真ん中で当たるよう調整した後に、古くなったハンマーフェルトの層を一皮むくことによって、
音色の不揃いが直り、本来の声が聴こえてきます。


 10.全体調整・調律・ヴォイシング(整音)

総ての部品を元通り組み上げたら、そこからこのピアノ本来の声を引き出すための調整・調律・ヴォイシングを繰り返します。
部品をたくさん交換している場合は安定するまでに時間が掛かりますが、
調整を繰り返し、時間が経つにつれて高貴で甘い声が出てくるようになります。




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